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2019.1.7

平成30年度京都市生物多様性セミナー~京都の地形と生物多様性~を開催しました!@キャンパスプラザ京都(平成30年11月23日)

 京都市では,市民や事業者,活動団体の皆様に,生物多様性についての理解を深めていただくとともに,保全活動の輪を更に広げていくため,「京都市生物多様性セミナー」を開催しています。

 5回目となる今回は,「京都の地形と生物多様性」をテーマとして,京都環境賞受賞者の活動発表,京都高低差崖会崖長の梅林秀行氏の講演と,識者によるパネルディスカッションを行いました。

 

平成29年度京都環境賞受賞者の活動発表

 京都環境賞は,京都市内で環境保全に貢献する活動を実践されている方を京都市が毎年表彰しているものです。

 平成29年度の京都環境賞を受賞された方から,その優れた活動内容を発表していただきました。

 

里山資源(京都環境賞) 代表 篠崎 真 氏 

 京都環境賞(大賞)を受賞された「里山資源」は,放置竹林問題の解決を目指し,平成18年度より竹炭焼成活動を行うとともに,竹を産業資材とする技術について化学的に研究・開発し,竹の新たな活用方法(食品用色素や石鹸など)を広め利活用を伸ばす活動に取り組まれています。

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 竹の利用が少なくなり竹林が放置されるようになったことで,放置された竹林が周囲の森林や家屋に浸入するなどの問題が起きています。

 竹が産業資材として使われることで竹林に人の手が入るような社会をつくり,放置竹林問題を解決するために,竹から作った緑色の色素を食品などに活用するなど,竹を化学的に利用する方法を開発しています。

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チマキザサ再生研究会(特別賞(環境未来賞)) 事務局長 東口 涼 氏

 特別賞(環境未来賞)を受賞された「チマキザサ再生研究会」は,祇園祭の粽に欠かせないチマキザサについて,防鹿柵や保護区の設定による再生保護活動,地域や小学校と連携したワークショップ等の普及啓発活動,関係団体等のヒアリングによる調査研究等に取り組まれています。

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 かつては「北山のチマキザサ」として洛中の人々に好んで用いられ,数世紀に渡り,祇園祭の粽(ちまき)や京料理,和菓子などの文化を支えてきたチマキザサが,一斉開花し枯死した後のシカによる採食や生息適地の減少など,様々な要因から現在では危機的な状況になっています。また,産地である農山村の高齢化や過疎化は,ササの利用技術の消失を引き起こしています。

 チマキザサを再生する取組を進めるため,京都大学や左京区役所,生産地(左京区花脊地区)・消費地(山鉾町)の自治会などを構成員として,「チマキザサ再生研究会」を立ち上げ,研究や,防鹿柵の設置・モニタリング,トレイルランナーによる防鹿柵の見回り・修繕などの活動を行うことで,チマキザサの回復が見られるようになりました。

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基調講演「歴史的な観点から見た“名所”の環境変化」 

京都高低差崖会崖長 梅林 秀行 氏

 基調講演として,NHKの人気まち歩き番組に出演され京都の魅力を紹介されている梅林秀行氏から,京都の生物多様性について,地形・植生の変化など歴史的な観点からお話しいただきました。

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 日本列島は,東西圧縮によりしわ(断層)ができたことで,盆地と山地の繰り返しができ,そこに人間のハビタット(生息地)が形成されました。

 花折断層は,京都大学の農学部グラウンドで見ることができます。吉田山は,花折断層の「末端膨隆丘」(断層の末端が膨れ,盛り上がったもの)です。吉田山は,人間の活動が多く記録されている場所で,宗教的空間である吉田神社があり,また,江戸時代の名所図絵には吉田山でピクニックをする様子が描かれています。このように,圧縮されてできた力こぶの上が人間の祈る場所,遊ぶ場所になっています。当時は,現在と違い,吉田山の斜面には木が少なく,マツが生えていました。

 桃山断層は,八坂神社の階段になっており,自然にできた,自分より高い目線の場所に神仏を祀る,「自然の神棚」といえます。また,江戸時代の名所図絵を見ると,八坂神社周辺にも木は少なく,マツが数本生えているだけということが分かります。

 鴨川から東山までの斜面の断面を見ると,斜面と平地が繰り返され,距離当たりの「場所」(人間がここからここまではひとまとまりである,と認知する空間)の数が多い。これが,東山の名所の特性です。

 では,名所を人間の文化的・社会的なハビタットとして考える場合,名所化する斜面とは何なのか,また,人間の多様な活動にとって,そこにいる生きものにとって斜面とは何なのか,ということを考えていきたいと思います。

 斜面は,重機がなく開発が難しかった昭和30年代頃までは緑地帯であり,オープンスペース(人々が集まりやすい場所,境内などの公共空間)でした。名所は,斜面を通じて景観や生物の多様性を愛でる場所であったといえます。

 近代以降は,人間がハビタットに力を加え,景色や環境そのものを作り出す「修景」が顕著に行われるようになりました。円山公園は,大規模な造成が行われ,修景により京都らしい景観が生み出された例です。自然によって決定論的に文化が決まるのではなく,人間が自然(生物多様性)に対してかなり大胆に関与するようになったのです。

 生物多様性は,我々の生活圏,特に都市部において,人間抜きに存在しうるのでしょうか。

 現代では,人間が地質レベルで地球環境に大きな影響を与えるようになっており,「人新世」という新たな地質年代を用意するべきだという議論もあります。

 自然は独立したものではありません。雲の上のものとしてみるのではなく,歴史的・文化的にみる視点が必要なのではないでしょうか。

 当事者として,生物多様性にどうかかわればいいのか,私たちの「生物多様性」を考えるべきではないでしょうか。

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パネルディスカッション「京都の生物多様性と地形の関わりについて」

コーディネーター

 森本 幸裕 氏(公益財団法人京都市都市緑化協会理事長,京都大学名誉教授)

パネラー

 梅林 秀行 氏(京都高低差崖会崖長)

 小川 勝章 氏(植治次期十二代)

 深町 加津枝 氏(京都大学大学院地球環境学堂准教授)

 

 はじめに,パネラーの小川氏,深町氏,梅林氏から自己紹介をしていただいたあと,コーディネーターの森本氏から,生物多様性についてや今回のパネルディスカッションの流れについて,説明をしていただきました。

 自己紹介の中で,小川氏からは,庭園と自然の関係や松材線虫病について,深町氏からは,利用されなくなった里山林の問題や,吉田山などで行われている取組についてお話しいただきました。

 森本氏からの解説の中では,短期的に見れば災害でも,攪乱によって多様な土壌や植生がつくられ,攪乱がありつつも全体として持続しているのが,千年の都京都なのではないか,というお話がありました。

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生物多様性の保全において,目指すべきゴールはどこか? 自然とはどういう姿か,という現在の合意形成が必要ではないか。

(深町氏)ゴールをすぐに見出すことはできないのではないか。まずは,それぞれの場所を歴史的に読み解き,丁寧に向き合い,ゴールを見出していくしかない。その際,色々な人の視点から見ることも大切である。

(小川氏)庭づくりにおいても,お庭の今後の姿はある程度は想像できるが,言い切ることはできない。数十年後,こうなっていてほしい,という願いを込めて造っている。

(森本氏)一つのゴールを前提とせず,皆で考えていくべきということだろう。生物多様性の保全を考えるうえで,種の絶滅など,なくなってしまうと二度と戻せない,ということは大きな問題である。そのため,ゴールの検討の前提として,近代化の前からあった生物多様性は,我々の時代でなくしてはならないのではないか。

(深町氏)ゴールは日々の積み重ねで見えてくる。皆が身近な大事な場所に関わり続けることで,それぞれで進むべき方向が見えるのではないか。

人間と自然との関わりはどのように変化しているのか? 人間は生物多様性に対して関与すべきなのか?

(梅林氏)縄文後期から弥生前期に,水田をつくるようになり,全国的に集落が平地に下りている。人間にとってハビタットであった斜面が,平安京以降は,他者として見られるようになった。時代によって,地形そのものは変わらなくても,人間の地形に対する見方が変わっている。

(小川氏)人の手で造られた庭でも,魚がやって来るなど,自然の力を宿してくる。琵琶湖の水を引くと,平安神宮のイチモンジタナゴのように絶滅危惧種がやって来ることもあるが,鯉ヘルペスや外来種が入ってくることもある。

(深町氏)山を薪炭利用していた時代に絶滅しなかった生きものが,ここ50年で絶滅していっている。なぜ絶滅しているのか,人間が自然にどう関与したのかを,分析することが必要。過去も含めて,人間による働きかけをしっかり評価すべき。

(森本氏)生物の種数でいうと,里山である大原野の方が,原生林といわれる京都大学芦生研究林よりも多い。里山として人間が利用している方が,多様な生きものが見られるということもある。

(森本氏)人間の関与が重要ということは,今日の結論の一つ。都市でも絶滅危惧種は生育できる。そのような場所を街中にも作らないと,生物多様性の危機は乗り越えられない。人がうまく関与する,ということが大事なのではないか。

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 当日は,約200名の方に御来場いただきました。

 たくさんの御来場,誠にありがとうございました!

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